蟹風船
安田博士の指揮のもとに、いよいよ遺体の検診がはじまる。
すごいほど青ざめた顔は、はげしい苦しみの跡をきざんで筋肉のでこぼこがひどい。
頬がげっそりとこけて眼球がおちくぼみ、ふだんの小林よりも十歳ぐらいもふけて見える。
左のコメカミにはこんにちの十円硬貨ほどの大きさの打撲傷を中心に五六ヵ所も傷がある。
それがどれも赤黒く皮下出血をにじませている。
おそらくはバットかなにかでなぐられた跡であろうか。
首にはひとまきぐるりと細引きの跡がある。
よほどの力でしめたらしく、くっきりと深い溝になっている。
そこにも皮下出血が赤黒く細い線を引いている。
両方の手首にもやはり縄の跡がふかくくいこみ赤黒く血がにじんでいる。
だが、こんなものはからだのほかの部分にくらべるとたいしたものではなかった。
帯をとき着物をひろげてズボン下をぬがせたとき、
小林多喜二にとってどの傷よりもいちばんものすごい死の「原因」を発見したわれわれは、
思わずわっと声を出していっせいに顔をそむける・・・
ということで、遅ればせながら会社の新年会がありました。
場所は、横浜山下公園前の「スターホテル」の蟹懐石料理店「蟹風船」。
この店の名前は、
「紙風船」をもじったのか?
「蟹工船」をもじったのか?
「蟹工船」の作者である小林多喜二は、特攻警察の拷問で死んだって知ってましたか?
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